人生100年を見据えるなら知っておきたい!厚労省生命表と老化の科学

「長寿国 死ぬのが下手な 人ばかり」という川柳があります。フレイル(虚弱)や脳卒中に襲われると、その後の生活の質は大きく落ちてしまう。長生きできても、その時間を楽しめなければ本当の意味での“人生100年時代”とは言えません。

後期高齢者1年生となった私自身、まさに「老いの大波」が迫ってくる入口に立っています。けれども、その波にのまれるのではなく、「かかってこいや!」と胸を張って言える戦略を持ちたい。本記事では、厚生労働省の最新「簡易生命表」をもとに、100歳まで生きるのはそんなに簡単なことではないとの認識と100歳を健康に生ききるための具体的な考え方をお伝えします。

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「老いの大波」を超えた者だけが百寿者切符を手に入れる

厚労省が発表した2024年「簡易生命表」(出典1)をもとに作図した図-1の死亡者数の年齢曲線をみると、男性は88歳、女性は92歳が最も亡くなる人の多い年齢です男性は75~95歳、女性は80~100歳で大半が人生を終えることが分かります。

つまり100歳まで生きるには、この「老いの大波」に巻き込まれないことが絶対条件です。そして波の正体は「老化細胞の蓄積」。無策のままでは確実に飲み込まれます。だからこそ、老化細胞の蓄積速度を可能な限り遅らせることが鍵となります。

参考記事:パラビオシス試験は、老化メカニズムを明らかにした

目標は「介護フリーの元気な95歳」

次に注目すべきは、各年齢での「100歳まで生存できる確率」(図-2)です(2024年簡易生命表より作図)。75歳時点で100歳まで到達できる確率は、男性2%・女性7.4%。一見低いように見えますが、95歳まで到達すると一気に確率は跳ね上がり、男性16%・女性26%に。

つまり、「元気な95歳」になれれば、その先に100歳が見えてくるのです。ただし「生きているだけの95歳」では意味がありません。介護を必要とせず、自分の足で歩き、趣味や社会参加を楽しめる状態で95歳を迎えてこそ、100歳への扉が開かれるのです。

そのためには、老化細胞の蓄積を抑えると分かっている 「食事・運動・睡眠習慣の最適化」+「自分らしい社会参加」 が欠かせません。

参考記事:【ピンピンコロリ型長寿の科学】健康寿命を延ばす方法とは?

平均寿命を100歳に押し上げる次のイノベーション

ウィスコンシン大学の研究(出典2)によると、平均寿命の延びは20世紀後半以降鈍化しており、2100年までに「平均寿命100歳」に到達することは難しいと予測されています。その理由は、かつての抗生物質登場が小児死亡率を大きく押し下げた効果がすでに飽和しつつあるからです。また、多くの成人病予防薬である高血圧治療薬、高脂血症治療薬や分子標的型制がん剤等、多くの新薬が登場したにもかかわらず抗生物質ほどのインパクトはありませんでした。

しかしここに「老化細胞除去薬」や「老化細胞不活化薬」といった新しい医療イノベーションが加われば話は変わります。寿命の限界が再び押し上げられ、平均寿命100歳時代が現実になる可能性もあります。その時期は案外早く来るかもしれません。

その恩恵を最大限に受けるためにも、今の私たちができることは一つ。介護フリーの健康状態を維持して、次の医学的ブレークスルーが訪れる日まで生き延びることです。

まとめ

厚労省の簡易生命表から見える現実は、100歳まで生ききるのは容易ではないということ。しかし、戦略を持って日々を過ごせば「介護フリーの元気な95歳」は十分に目指せます。そして95歳を超えれば100歳到達の可能性はぐっと高まるのです。

  • 老いの大波の正体は「老化細胞の蓄積」
  • その波を超えるには長寿型の生活習慣(食事・運動・睡眠+社会参加)が必須
  • 目標は「介護フリーの元気な95歳」
  • その先にあるイノベーションの恩恵を受けて、健康100年時代を実現する

人生100年をただ長く生きるのではなく、最後まで自分らしく元気に生ききる。これこそが、私たちが目指すべき「真の長寿戦略」ではないでしょうか。

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出典

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  1. 令和6(2024)年簡易生命表(男)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life24/dl/life24-06.pdf;令和6(2024)年簡易生命表(女)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life24/dl/life24-07.pdf 無料
  2. Jose Andrade, Carlo Giovanni Camarda, & Hector Pifarre I Arolas, 2025, “Cohort mortality forecasts indicate signs of deceleration in life expectancy gains” Proc Natl Acad Sci U S A. 2025 Sep 2;122(35):e2519179122. doi: 10.1073/pnas.2519179122. Epub 2025 Aug 25. 無料
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