100年健康ナビでは「老化をスローダウンする」=「老化細胞の除去能力を保つ」ことをテーマにしてきました。今回は逆の視点、「老化をスピードアップさせる要因」を取り上げます。その代表格が喫煙(たばこ)です。タバコが肺がんを増やすことは広く知られていますが、本質は「老化を加速させる老化促進薬」だという点にあります。
日本ではタバコ関連死が年間約21万人(WHO 2019)に上るのに対し、交通事故死は約3,215人(警察庁 2019)。桁違いの早死リスクを抱えているのです。ここでは「タバコ=老化加速薬」の科学的根拠を見ていきましょう。
※本記事は紙巻きたばこに関するもので、加熱式たばこは含みません。企業とは独立した研究では加熱式でも紙巻きたばこ同様に健康リスクが懸念されています(出典1)。
タバコが老化を加速することを明らかにした研究
喫煙と寿命の関係を最初に大規模に示したのは、イギリスの統計学者ロバート・ドール卿らの研究です。1951年から英国男性医師34,439人を対象に50年間追跡し、喫煙と死因の関係を調査しました。その結果、1900~1930年生まれで一生タバコを吸い続けた男性は、非喫煙者に比べて平均寿命が約10年短いことが判明しました。つまり喫煙は「老化を10年加速させる」といえるのです(出典2)。
禁煙すると「老化の加速」は止まる
さらに同研究は、禁煙のタイミングによる寿命の延長効果も明らかにしました。
- 60歳で禁煙:平均余命+3年
- 50歳で禁煙:+6年(死亡リスクは半減)
- 40歳で禁煙:+9年
- 30歳で禁煙:+10年(非喫煙者とほぼ同等の寿命)
つまり生涯喫煙で寿命は10年縮みますが、50歳で禁煙すれば短縮は4年に抑えられるのです。
若い時の禁煙が効果的な理由
タバコは体内に老化細胞を増やします。しかし20~30代では、老化細胞を除去する力が十分にあるため、発生した老化細胞を素早く処理できます。そのため早期禁煙で「影響が残らない」場合が多いのです。
一方40代以降は老化細胞の除去能力が落ち始め、50代、60代と低下が進みます。それでも禁煙の効果はあり、60歳で禁煙しても平均余命が約3年延びます。老化細胞除去力が最低レベルとなる80歳以降でも、禁煙にメリットは小さいながら確実に存在します。
参考記事:老化は数式で説明できる!「老化細胞除去飽和モデル」の衝撃
特に若者に伝えたいのは「30代前半までに禁煙すれば、喫煙による寿命短縮をゼロにできる」という重要な事実です。
まとめ
- タバコは単なる発がんリスクではなく、「老化を加速させる薬物」。
- 生涯喫煙者は平均で10年寿命が縮む。
- 禁煙のタイミングで寿命延長効果は大きく異なり、30代までにやめれば影響はほぼゼロ。
- 40代以降でも禁煙は有効で、遅すぎることはない。
タバコは「命を燃やす老化促進薬」。もし喫煙しているなら、今すぐにでも禁煙することが、老化スピードを取り戻す最大の健康投資です。
出典
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- Sarah Ghazi et al., 2024, “A scoping review of the toxicity and health impact of IQOS” Tob Induc Dis. 2024 Jun 3:22. doi: 10.18332/tid/188867. eCollection 2024.1. 無料
- Richard Doll et al., 2004, “Mortality in relation to smoking: 50 years’ observations on male British doctors” BMJ, doi:10.1136/bmj.38142.554479.AE(published 22 June 2004) 無料
