夏の暑い日に「頭がぼんやりして集中できない」と感じたことはありませんか?
これは単なる体感ではなく、科学的に裏付けられた現象です。特に 高齢者や認知症の方、認知症予備群 にとって、夏の高温は 認知機能低下(脳の夏バテ) を引き起こすリスク要因とされています。
本記事では、最新の研究をもとに「どれくらいの暑さで認知機能が落ちるのか」「どのように対策できるのか」をわかりやすく解説します。
夏は認知機能が落ちやすい季節 ― 研究で判明
米国で行われた大規模研究(REGARDS研究, 対象:20,687人)では、認知機能は冬に最も高く、夏と秋に、特に夏に顕著に低下することが報告されています【出典1】。
特に75歳以上の高齢者ではその影響が大きく、温度ストレスへの脆弱性が示されました。
臨床医の報告によれば、この「夏の認知機能低下」は一時的で、秋以降には回復する場合が多いとされます。まさに季節性の「脳の夏バテ」といえるでしょう【出典2】。
室温管理がカギ ― 28℃以下を目安に
台湾の研究(65歳以上996人対象)では、外気温が28〜30℃のときに認知スコアが有意に低下することが明らかになりました。さらに、認知障害を持つ高齢者では影響が強く出ることも示されています【出典3】。
エアコンの温度設定は「省エネ」だけでなく、脳を守るための健康投資と考えることが大切です。特に高齢者の生活環境では、20℃台前半を目安に涼しい室温を維持するのが理想といえます。⇒介護にかかわっておられる方は特に注意
夏の認知機能低下を防ぐ4つの対策
夏の暑さによる認知機能低下は完全には避けられませんが、工夫でリスクを減らせます。
- 重要な判断や契約ごとは冬に行うのがベスト
- 夏場の意思決定は家族の同席を検討
- 外出時は「Bプラン」を用意(交通遅延や体調不良を想定)
- 「夏は脳が鈍る」と自覚すること(本人は低下に気づきにくい)
まとめ:夏は「脳の夏バテ」に要注意
- 認知機能は 冬に高く、夏と秋に低下する
- 75歳以上や認知症のある方は特に影響を受けやすい
- 室温は 28℃以下、できれば20℃台前半を維持
- 夏の重要な判断は慎重に、冬に回せるものは冬へ
- 外出時は 「もしもの備え」を忘れずに
脳もコンピューターのように暑さでバグります。夏は脳にとってストレスフルな季節。特に高齢者や認知症の方は、認知機能低下が日常生活のトラブルにつながる恐れがあります。
室温管理と生活習慣の工夫で「脳の夏バテ」を予防し、安心して夏を乗り切りましょう。
出典
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- Anam M Khan et al., 2021, “Association between temperature exposure and cognition: a cross-sectional analysis of 20,687 aging adults in the United States” BMC Public Health. 2021 Jul 29;21(1):1484. doi: 10.1186/s12889-021-11533-x. 無料
- 朝田 隆, ケアネット記事「認知症は夏に悪化する!? 脳の夏バテに注意」2024年9月10日公開 https://www.carenet.com/series/dem/cg003990_021.html?utm_source=m34&utm_medium=email&utm_campaign=2025080601
- Yuan-Ting C Lo et al., 2021, “Association between ambient temperature and cognitive function in a community-dwelling elderly population: a repeated measurement study” BMJ Open. 2021 Dec 7;11(12):e049160. doi: 10.1136/bmjopen-2021-049160. 無料
